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ふだんの生活についてお聞きしたいんですが、一つの作品が出来るまでに、どういうステップを踏むんですか?

単純作業の1ヶ月の仕事の話をすれば、ネーム(※ページ数に合わせてコマを割ってセリフを入れて、書いたり消したりの作業)に大体1週間。それから下絵がまた1週間ちょっと。私一応自分で全部描いてペンも入れてるからそのくらいかかるんだけど。ペン入れでまた1週間。トーンとベタっていう最後の仕上げの処理だけ手伝いに入ってもらって、その作業が2日くらいかな。だから完全に休んでいられるのは、月のうち正味1週間。その1週間さえも気が気じゃないっていうか、心ここにあらず、みたいな感じです。

今は連載をしておりますので、勝手が分かりません(笑)。短編や読みきりを描いてるときは、ここからここまで、と考えられるけど、連載になるとどう話が転がってくか分からないから、ずーっと泳いでいる感じ。連載はアンケート悪かったら即切られるから、いつ切られるか分からないっていう恐怖もある。わりと読みきりスタイルにはしておいてくれって言われてたんだけど。わりと好きなように描いていたんだ、いつ終わってもいい、くらいの気持ちで。でも運良く描かせてもらっていて、続きますって言うんで。そんなチャンス滅多にないから、いっそのこと大風呂敷広げて、ちょっと描けないようなデカい話を『レタスバーガー』で描こうと今思っています。それが上手くいくかどうかまだ分からないし、戦い中というか、溺れないように頑張っているというか、冷静を保つようにしています。

ネームをやっている時には、もう訳も分からずワーッとやってるから、その分自分の意識とかほとんどなくて。だから自分で描いて苦労したのは憶えているんだけど、結果として本になって見たときとかは、あんまり自分が描いたっていう感覚がないのよ。すごく客観的に見れるっていうか。「下手だなー」とか(笑)。「ここの画まちがってるなー」とか。「デッサン変だぞー」とか。


雑誌の方針と違うことをやりたいと言った時には、担当さんとのせめぎ合いはあるのでしょうか?

いや、私はない。『レタス』に関しては、ほんとに好きにやらせてもらってる。例えば「ミュージカルバージョン」というのがあったんだけれど、あれなんか絶対アンケートがとれないからってかなり渋られたんだけど、でもどーしてもやりたいから描かせろって感じで、無理やり描いて送りつけたみたいな感じで。そしたら今までのアンケートのなかで一番悪かった。それも今まで見たことないような数字で。あそっか、ああいうのダメなのかって思ってたんだけど。ある読者の人から編集部に電話がかかってきて、「すごい面白かったって松田さんに伝えて下さい」って言ってくれた人がいたんだって。だから、ものすごい反発食らう作品は、一方ではものすごく喜ぶ人もいる。ああいうのは、たまーにやらせてもらえるなら、やりたい。息抜きにもなるし。友だちが、あれ載せた『コーラス』がえらかったって言ってたから。だからラッキーでしたね、あんなもんが載ったのは。

あれ本当は連載の1回目に巻頭でカラーでやりたいって言ってたんだ。もうネームも出来てたんだけど、編集さんに1週間がかりで説得されて、「お願いだから止めてくれ」って(笑)。私は絶対面白いと思ったから、なぜダメなのか聞いたら、巻頭っていうのは雑誌の顔そのものだから、ああいうものを巻頭に持ってくるとほかの先生の迷惑になるって言われて。あ、それなら巻頭では描いちゃダメだな、と思って諦めたんだけど。チームワークってあるんだなーって、初めて気がついたけどね。ぐうの音も出ないでしょ、ほかの先生の手前があるって言われたら。


松田さんの作品では、恋愛だけじゃない話が結構たくさんあって、脇役のキャラもすごいですよね。先ほどの社会人経験もつながっているんじゃないかと思いますが、人間を観察する力が強い人だという印象を受けます。

たぶんね、それは育ちが関係していると思う。私は団地で育っていて、団地って家がみんな同じ規格なんだけれど、その中でもいろんな家族がいたわけよ。例えば、普段はすごくいいおじさんなんだけど、夜になると(そのおじさんが女房を刺しそうになって)救急車が呼ばれたりとか。親がちがう子どもとか、親がいない子とか、色々見てきたから、そのせいかもしれない。通り一遍のいいお父さん、お母さんじゃなくて、その前に一人ずつ人間だっていうのが、今となってはとてもいい環境だったのかな、と思う。


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